マガジン公開日:2025.11.05更新日:2025.11.05

【からくり箱の好奇心|第12回】秋の散歩

 

小さな冒険のススメ、秋の散歩に出かけよう

 

秋は、ちょっとした“冒険の心”が湧いてくる季節だ。行楽地に出かけるのもいいが、まず身近なところへ。家を一歩出たときから、いろいろな未知との出会いが待っている。

 

この季節の空気は、歩くのにちょうどいい。汗ばむほどでなく。手をすり合わせる寒さもなく、散歩にはうってつけである。例えば、いつもは通り過ぎる路地を抜けると、古いビルの1階に洒落たカフェを見つけた。「今日は散歩日和ですね」と笑顔を向ける店主夫妻、何気ない会話にすっかり和んでしまう。

 

早起きをして、朝の商店街を歩くのも愉しい。半分シャッターを開けた店から焼き立てのパンの香りが漂ってきたり、新しい店を見つけたり。街が元気に息づいてることを感じるのだ。

 

少し足を伸ばして、公園のベンチで一息つこうか。手を繋ぎ歩く老夫婦、スケッチブックに筆を走らせる青年、走り回るわが子にカメラを構える若い母親、誰もが思い思いに過ごしている。見渡せばコスモス、なでしこ、山茶花、寒木瓜など秋咲きの花がいっぱいだ。そんな風景を眺めていると、自分もその中に溶け込んだような気持ちになってくる。

 

小さな冒険は、遠くに行くわけではない。見慣れたつもりの風景の中に、今まで気づかなかった物や事、人とめぐり会い、もう一つの世界を見つけること。心のアンテナが広がり、自分の中に新しい風が吹いてくるだろう。心を豊かにしてくれる小さな冒険へ、ただいま散歩のベストシーズンである。

 

 


■プロフィール

西濱 謙二(にしはま けんじ)

広島市生まれ・在住のライターです。人、街、企業、モノづくりなどの取材と撮影をフリーランスでしています。様々に活躍される方々からお話を聞くご縁に感謝し、同じシニア世代の方々にとって共感したり、和みになったり、小さくとも何かのお役に立てればと願っています。