【からくり箱の好奇心|第14回】炎のぬくもり

冬が深まると童謡「たきび」を思い出す。垣根を曲がると焚き火が燃えているのだ。歌詞の中にはないが、みんなは焚き火の中でサツマイモを焼き、熱々をほおばったことだろうな。そんな暖かなイメージを思い浮かべ、寒風の中で口ずさんでみる。
年間平均気温の記録を見ると、昭和は現在よりも寒かった。暖房に関する社会インフラは発展途上で、昔はどこに行ってもなんだか寒かったのだ。昭和の小学校は暖房が石炭ストーブで、昼には給食のパンを焼いたり。ストーブに席が近い生徒は寒いどころか顔を赤くしてのぼせたりした。そんなことは今じゃ考えられないだろう。
部屋全体を効率よく温めるには、石炭ストーブや火鉢はエアコンにかなわない。ただ、炎のゆらめき、パチパチとはぜる音に癒やしを感じる。実際、炭などが燃える時は遠赤外線が放射されて、体の血行を促し、筋肉の緊張をほぐして、疲労やストレスを和らげるのだ。そして、もうひとつ。古代の人は初めて火を使うようになって、明かり、暖房、料理など実に多くの幸せを手に入れた。その喜びは長い歴史(一説では人類が火を使い始めたのは約180万年前)をこえて、今も記憶の遺伝子に残っているんじゃないだろうか。
炎を眺め、ほっとくつろぐ、静かに語らう。仮想空間ではないリアルな炎のぬくもりに憧れている。焚き火や石炭ストーブはむずかしいので、小さな火鉢を家に置きたい。お餅を焼いたり、酒を燗したり、愉しいじゃないか。火の始末や一酸化炭素中毒には気をつけるつもりだ。
■プロフィール
西濱 謙二(にしはま けんじ)
広島市生まれ・在住のライターです。人、街、企業、モノづくりなどの取材と撮影をフリーランスでしています。様々に活躍される方々からお話を聞くご縁に感謝し、同じシニア世代の方々にとって共感したり、和みになったり、小さくとも何かのお役に立てればと願っています。
