マガジン公開日:2026.04.08更新日:2026.04.08

【からくり箱の好奇心|第17回】ウクレレを弾いてみよう、春だから

 

春のやわらかな光には、不思議な力があるようだ。寒い季節に縮こまった背中をそっと押して、「なにか新しいことを始めないか」と囁いてくる。カメラを手に街歩き、山歩き、キャンプや釣り、サイクリング。いずれも魅力的だが、ふと思う。日常のすぐかたわらで、これからの時をともに過ごせる相棒のような存在はないだろうか。それには楽器がふさわしい。なかでもウクレレがいい。

 

ウクレレとギターを比べると、全長は半分程度で、容積は4分の1ほど。アコースティックギターのスチール弦を鳴らせば、ジャラーンと鳴り響く。いっぽうウクレレは、ポロンと優しい音が、肩の力を抜いてくれる。ウクレレの弦はナイロン製で押さえやすく、ギターの6弦に対して4弦だから、押さえる指の数が少ない分、習得のハードルは格段に低い。つまり、ウクレレは「挫折しにくい楽器」なのである。

 

本を片手に独学するも、教室に通うのも、スタイルは自由だ。ポピュラー、Jポップ、クラシックまで、ウクレレ向けに編曲された譜面は驚くほどそろっている。唱歌「椰子の実」を爪弾けば、南の風を感じる。ドビュッシーの「月の光」ではピアノと違い、素朴で温かな夜景が浮かぶ。

 

夏のビアパーティーで一曲。クリスマスまでには数曲のレパートリーを。そんな目標を立てれば、日々の練習に張りが出る。最初は思うように弾けないが、心地よい指の痛みを知ることも、音楽の愉しみのひとつではないだろうか。

 

ウクレレを初めて手にするその瞬間、人はいくつになっても誇らしい「まっさらの一年生」の気持ちになれる。春は、そのための季節である。

 


■プロフィール

西濱 謙二(にしはま けんじ)

広島市生まれ・在住のライターです。人、街、企業、モノづくりなどの取材と撮影をフリーランスでしています。様々に活躍される方々からお話を聞くご縁に感謝し、同じシニア世代の方々にとって共感したり、和みになったり、小さくとも何かのお役に立てればと願っています。