ZUTTO応援団公開日:2025.10.22更新日:2025.10.22

旅に希望を―心の翼がつないだ笑顔の輪。誰もが旅を楽しめる社会を目指して|株式会社昭和観光社

旅に希望を―心の翼がつないだ笑顔の輪。誰もが旅を楽しめる社会を目指して|株式会社昭和観光社

いくつになっても、自分の行きたい場所へ行きたい。見たいものを見て、旅を楽しみたい。
その願いを叶えてくれる旅行会社が、広島にあります。

心が羽ばたけば、どこへでも行ける。そんな想いを名前に込めた「心の翼バリアフリーツアー」を提供しているのが、昭和観光社です。

目次

旅行で笑顔を広げていきたい

昭和観光社は、高齢者や障がいのある方も安心して旅を楽しめるよう、ユニバーサルツーリズムの推進と総合支援を強みとする旅行会社です。

代表取締役の平森さんは、42年にわたるキャリアの中で、誰もが安心して旅に出られる社会を目指し、実直に歩みを重ねてこられました。

 

代表取締役 平森 良典(ひらもり よしのり)さま

ZUTTO応援団 笑顔の平森さん

笑顔が爽やかな平森さん。愛称は「平ちゃん」。

 

■「心の翼バリアフリーツアー」を始めたきっかけは何ですか。

平森 良典さん(以下、平森):24歳のときに肺の異変で緊急手術を受けました。2回目の異変が、伊豆半島バス3台の添乗中、帰る途中の琵琶湖・大津で起きたんです。

安静にしながら広島に戻る道中、一緒に旅をしてきた障がい者団体の方々の、屈託のない笑顔が次々と思い浮かび、また違う方のとろけるような笑顔が浮かんでくる…。ああ、この笑顔をもっと広げていきたいと、心から思ったんですね。それが始めるきっかけになりました。

 

■「心の翼バリアフリーツアー」の強みを教えてください。

平森:ユニバーサルツーリズムで、主催募集型のツアーを30年間続けているのは、業界でも当社だけ。商品は、添乗員付き・なし、タクシーやマイカーでの家族旅行、オーダーメイド旅行など、お客さまのニーズに合わせて多彩に展開しています。中でも添乗員付きツアー商品の大自然では、標高2,000m級の観光地へ車いすの方を案内(立山・新穂高・千畳敷カール・乗鞍岳畳平・北八ヶ岳など)3,000mのアルプスの連峰の絶景から大感動の提供を大切にしています。希望者へ現地温泉入浴ヘルパー手配(介護事業所連携)や旅行付き添いサポーター手配(見守り・介助・介護・看護)が大好評です。

 

昭和観光社 千畳敷カール展望台 宝剣岳銀世界の絶景

標高2,612m千畳敷カール展望台で標高2,931m宝剣岳銀世界の絶景。車いすの方も安心して楽しめます。(画像提供:株式会社昭和観光社)

 

実はコロナ禍でも止めなかったんです。緊急事態宣言の期間を除き、1組限定で感染予防対策を徹底し動かし続けました。”旅行に行きたい”という方の希望の光になればと想いで、大自然を楽しむなど年50本の主催募集ツアーを発信し続けました。

 

昭和観光社のパンフレット

ツアーパンフレット。多彩な旅が用意されています。

 

■そもそも車いすで旅行に行ける方法を知りませんでした。

平森: JRの利用は、1か月前の売り出しで、車椅子トイレの近くにある車いす専用席の予約と駅係員が改札から利用の列車へ案内しスロープをかけて乗り込みサービスを活用して、安心快適な移動を提供しています。飛行機は悪天候に影響で欠航のリスクの不安があるので、今は取扱していません。

 

旅程も2〜3日程度に絞って、“最初の一歩”を踏み出しやすい旅を意識しています。

以前は、リフト付きバスを使い20名程度募集していましたが、多目的トイレの待ち時間が長くて…。利用者の多くが使うので時間がかかってしまうんです。今はリフト付きタクシーやジャンボタクシーを使っていて、2~3組限定ですが、待ち時間のストレスもなく快適です。

 

■温泉や大自然など、難易度の高い旅行も主催されています。

平森:温泉入浴では、現地介護事業所のプロのヘルパーを自費契約で手配し、入浴用車椅子を活用しながら2名体制の介助で安心快適な温泉を楽しんでいただいています。旅行の付き添い介助では、ツアーは1組限定の添乗員が移乗介助のサービスやオーダーメイドは付き添いで介助・介護・看護の提供でお客様の喜びの笑顔を共に感じながら楽しんでいます。

 

自費契約に応じてくれる事業所は少なく、50件ほど電話してお願いしました。余命宣告を受けた方の“最後の願い”など、お客さまの物語を丁寧に伝えることで、協力してくださる事業所もあります。

同行するヘルパーさんも、普段の介護では味わえない、心からの笑顔や感動に触れることができるんです。温泉に入れるなんて夢のようで、鼻歌を口ずさんだり、ハグして涙される方もいて…。

そういう瞬間が、介護の原点を思い出させてくれるし、ヘルパーさんの励みにもなっています。

 

昭和観光社 温泉に大満足の記念写真

念願の温泉に大満足のみんなの笑顔(現地ヘルパーと共に)(画像提供:株式会社昭和観光社)

 

■受け入れ先の宿や観光地を増やしていくのもご苦労があったのではないでしょうか。

平森:まさにそこです。30年前は、新幹線の駅にエレベーターもなくて、観光地に多目的トイレもない。温泉宿もバリアだらけで、ヘルパーさんとの入浴も、入浴用車椅子も全部ダメ。ほんと、ダメダメ尽くしでした。

でもね、“いずれは我が身”なんです。宿の方にはよくこう話します。

「あなたのおじいさんやお父さんが、あなたが働いている素晴らしい温泉に、最後に入りたいと願ったらどうしますか?」「あなたの宿にある多目的トイレ、それは何のために作ったんですか?」って。

そういう話を何度も重ねて、想いを受け止めてくださる宿を少しずつ広げながら、旅行のコースをつくってきました。

誰もが安心して旅に出られる社会へ

■観光産業への働き掛けもされています。

平森:“旅行会社の平ちゃん”一人ではどうにもならない次元の課題もあって、20年前に「バリアフリー旅行ネットワーク」を立ち上げました。

10年間で全国数百回のセミナーを行い、約4,000名の観光関係者(旅行・宿泊・運輸・教育など)の理解と声掛け接遇のできる人材育成、サービスの連携をしています。

そうした活動を続けながら、バリアフリーツアーの実践や企業ネットワーク活動の推進した結果、2014年には国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰。2015年には国内商品初のツアーグランプリ2015国土交通省大臣賞をいただきました。

 

昭和観光社 数々の受賞の盾を説明する平森さん

「国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰」をはじめとした数々の盾をご紹介いただきました。

 

2012年には「トラベルヘルパー養成講座」、2015年には「温泉入浴ヘルパー」の提言を行い、付き添いが必要な方でも旅や温泉を当たり前に楽しめる社会を目指して、業界にアドバルーンを上げました。

観光庁ができる前から、お客さまの生の声をまとめて国交省に提言し、ユニバーサルツーリズム部門の創設にも関わってきました。

2011年に設立されたユニバーサルツーリズム促進検討会では、立ち上げ時の委員も務めています。

 

■ユニバーサルツーリズムの推進に大切なことは何でしょうか。

平森:まずは情報発信です。旅館や観光地でバリアフリーが進んでも、発信されていなければ届きません。今は、ホームページをしっかり作って、人を呼び込む時代です。

ある温泉地でセミナーをしたとき、支配人や女将さんに「みんなでユニバーサルツーリズムを目指しましょう」と何度も伝えました。最終的には7社が協力して、DMC鬼怒川温泉のホームページにバリアフリー情報で発信されました。やっぱり“大義がないものは動かない”。それが私の信念です。

 

ユニバーサルツーリズムについて大切なことを語る平森さん

「現場での調整ごとやコンサルの際は、聞き役に徹します。」

感動体験を一緒にしませんか

■旅行サポーターについてお聞かせください。

平森:サポーター制度は、私自身が膝を痛めて、車椅子になるかもしれない経験をしたことがきっかけです。「同行者がいれば、旅は続けられる」、そんな思いから始まりました。

サポーター募集では、介護や看護の資格を持つOBの方に向けて「あなたのスキル、すぐに役立ちますよ!」と呼びかけています。応募時には、医療・介護の経験と資格を2つ提出してもらっています。

経験が少ない方には、車椅子を押さなくていい“見守り”から参加していただけます。

今後は「こんな旅をサポートしたい」というコメントをもらって、利用者とのマッチングも試していきたいと思っています。

詳しくは「心の翼バリアフリーツアー」のホームページをご覧ください。

 

■最後にメッセージをお願いします。                  

平森:“お客さまの喜びが自分の喜び”と思える、そんな仲間を探しています。

 

「あなたのスキル、必要とされてます!」

サポーター登録で、すぐに頼られて感動体験が待っています。

 

「途中障がいのある方へ。あきらめていた旅を、一緒に楽しみましょう。」

旅の目標が、しんどいリハビリを楽しくしてくれますよ。

 

「心の翼の想いに共感してくださる方へ。」

一緒に、笑顔あふれる社会をつくりましょう!SNSでの応援やモニターツアー協力も歓迎です。

 

身振り手振りも踏まえアツく語る平森さん

ずっとパワー全開の平森さん。胸アツなお話の数々をありがとうございました。

プロフィール

株式会社昭和観光社

URL/https://kokoro-ts.co.jp/

事業内容/
ユニバーサルツーリズム促進を軸とした総合支援
・旅行事業(心の翼バリアフリーツアー・相談旅行、福祉団体)
・旅行サポート支援事業(現地温泉ヘルパーや旅行サポーター手配)
・コンサル事業・専門派遣講師(研修、宿泊施設・観光団体・自治体向け支援)
など。

編集部より

「お客さまの笑顔が浮かんできて」という言葉から始まった今回の取材。でも、平森さんご自身の笑顔も素敵で印象に残りました。
30年前は“ダメだらけ”だったというバリアフリーツアーを、ここまで整えてこられたご尽力はもちろん、想いを形にする仕組みづくりにも真摯に向き合ってこられたことに、心を動かされました。お客さまの声に耳を傾け、行動し、周囲や次の世代へつなげていく——その姿勢に、深く共感しました。

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