シニア世代にとって映画は気軽に歩いて行ける娯楽の場。皆さまの行きつけの映画館として、おもてなしの心でお迎えする|株式会社序破急
映画でも見ませんか、と軽やかに語りかける
株式会社序破急は広島市の中心地に2つの映画館「八丁座」「サロンシネマ」を展開しています。シニア世代の心をつかむ作品では満席の日々を達成するなど、幅広く映画文化の振興に取り組む、代表取締役社長 蔵本 順子さんにお話をお聞きします。
代表取締役社長 蔵本 順子(くらもと じゅんこ)さま

館内にあるカフェ「茶論記憶」にて。映画鑑賞の前に、後に、愉しいひとときが過ごせるよう各種ドリンクから軽食まで用意されています。
■ここは広島市内で、最も中心地にある映画館ですね。
広島市にはかつて中区はもとより、その周辺エリアにも映画館が数多くあったんですよ。やがて、映画人口の減少や、郊外型シネマコンプレックスの台頭で次々と閉館していきました。
私には以前から夢がありまして、この街の真ん中に映画館を作って、みなさんに来ていただき、幸せな気分になって欲しいなあと思っていました。その第一歩として実現したのが「八丁座」です。

広島市のデパート福屋八丁堀本店にある「八丁座」、そこから電車通りを渡って姉妹館「サロンシネマ」はすぐ近くです。
■八丁座のオープンはいつですか。
この場所には別の映画館があり、2008年に閉館することに。まさに絶好の機会だと思いまして、個性あふれる広島の映画館を自分の手で作ろうと決意し、2010年に「八丁座」を開館。おかげさまで地域の皆さまに支持していただき、2014年には「サロンシネマ」を開館しました。
■ホームページでは「映画でも見ませんか」と軽やかに語りかけています。
私にとって理想的な映画とのつきあい方を申しますと。休日やちょっと時間が空いたときに、目的を決めないままふらっと街を歩き、たまたま映画館で目についたポスターを見て「ちょっと映画でも見ようか」というのがいいですね。
かつての映画ブームをご存知の方なら、この気楽に楽しむ感じをおわかりいただけることでしょう。

スクリーンの緞帳も、座席後方の提灯も、芝居小屋のイメージでコーディネイトしています。座席は高品質な「マルニ木工」に特別発注した幅85cmのオリジナルチェアです。
おもてなしの心で「行きつけの映画館」を目指す
■映画館の経営に携わったきっかけは何ですか。
もともとは私の父が映画興行をしておりまして、市内の鷹野橋という場所で映画館も手掛けました。その後、事業を継いで欲しいと言われまして、当時は東京で暮らしていましたが広島に帰郷したのです。
■よく決意なさいましたね。
私にとって映画館は、子供の頃から身近な存在で、楽しい遊び場でもありました。当時は映画の上映に加えて、演劇や歌手のステージを行う芝居小屋にもなって、老いも若きも集い、笑顔と歓声に満ちたエンターテイメントの場所だったのです。
私は長らく日本舞踊を学び、教室も開いていますが、かつて芝居小屋で輝くスターたちを見て、憧れた記憶によるものかも知れません。愛着ある映画館のためなら、やるしかないと決意しました。

入場扉に描かれた「もみじの四季」、「殿・姫」の表示がある手洗いのブランケット照明など京都東映撮影所大道具美術さんが手がけたものが随所に。
■事業の継承は順調でしたか。
実は大学を卒業後、会社勤めを2年してからは専業主婦でしたので社会経験は少ない。ですから、とにかく知識も経験も早く身につけ、深めようと。例えば映写技師に何かあっても映画が上映できるように、映写技師の資格も取りました。
また、受付の仕事も、トイレの掃除も、なんでも懸命になってやりました。
■フィルムマラソンというヒット企画もありました。
単なるオールナイト上映ではなく、合間にクイズや寸劇を盛り込んで、ご来場の皆さまに喜んでいただけるよう工夫をこらしました。
ひと晩をかけていくつもの作品を上映し、朝を迎える頃に終了です。始発の市内電車に乗れるように乗車回数券をお配りして、お客様の笑顔をいただく。そしてスタッフともども達成感につつまれたという、清々しい思い出があります。
■おもてなしの心は今も健在ですね。
当館のスタッフは「序破急」の文字を染め抜いたはっぴを着て、お客様をお迎えします。上映作品の紹介から、チケットの購入、座席のご案内など、きめ細かく声をおかけし、ご要望を聞き、対面のコミュニケーションを大切にしています。
場内が暗転した後、お客様が入場するときは足元をライトで照らして、ご不安がないように配慮。シニアの方からは安心できると喜ばれています。

取材に同席いただいた、支配人を務める御子息の蔵本健太郎さん。はっぴをお召しになっています。

靴を脱いで畳の椅子でくつろげる7人掛けの「八丁畳席」。
■「行きつけの映画館」というテーマをお持ちです。
何度かお越しいただいたお客様が、顔なじみの若いスタッフと鑑賞後の感想や話題の新作を語らう様子を見るのは、うれしいことです。映画を見るならまずここへ、皆さまにとって行きつけの映画館になるのが、私どもの願いです。
■お客様サービスにITも活用されています。
現在、オンラインでチケット販売を行っていますが、これもお客様のご要望にお応えしたもの。シネコンをはじめ美術館やコンサートなど、エンターテイメントのあらゆる場面でオンライン販売はもはや標準ですね。導入する前は、おもてなしの心が薄まるようで不安でしたが「便利になった」と好評なのです。
映画のベストポジションは、映画館であること
■映画の魅力とは?
映画は生き物のように、おりおりの時代を反映します。家の中にいてはわからない世相やブームを、心地よい座席に座ったまま体感できるのです。鳥の目になったり、虫の目になったりして、いろいろな世界や時代を観ることができますね。
■「映画のベストポジションは、映画館」と日頃から語っておられます。
最近はインターネットによる配信も増えていますね。昔に見た映画を久しぶりに見直してみたり、思い出のシーンを確認するにはとても便利。
しかし、劇場の大スクリーンによる映像の美しさ、客席の前後左右から響くサウンドの迫力、これらは家庭では味わえません。作品の世界に溶け込み、没頭できるのは、やはり映画館が一番ではないでしょうか。
■最近、人気を集めた作品を教えてください。
広島県尾道市に暮らす女性の101歳から104歳までを描いたドキュメンタリー「104歳、哲代さんのひとり暮らし」ですね。シニアのお客様がお友達と誘い合い、数多くご来場されました。主人公が地元という親近感もあって、ほぼ満席続きでした。今後もシニア世代に向けた作品を積極的にご紹介していきたいと思います。
■シニア世代にうれしい、歩いていける娯楽の場ですね。
映画館のついでに書店に立ち寄ったり、食事をしたり、映画は気軽に歩いて行ける娯楽です。シニアの皆さまには一番の娯楽と言っていいでしょう。
私どもの劇場では、60歳以上の方はお一人1,100円でご鑑賞いただけます。心地良いシートに座って、ゆっくりと作品を鑑賞し、豊かな気持ちになっていただきたいですね。映画のある暮らしが、皆さまのライフスタイルで在り続けることを心より願っております。
プロフィール
株式会社序破急
TEL/082-546-1158
URL/https://johakyu.co.jp/
事業内容/映画興行「八丁座 壱・弐」「サロンシネマ 1・2」
・映画の企画、制作、配給(外国映画も含む)
・映画興行に関わるセールスプロモーションおよびパブリックリレーションズ、イベント、シンポジュウム、セミナーなどの企画、構成、実施および講師の派遣など