マガジン公開日:2026.06.10更新日:2026.06.10

涼を嗜む、器の衣替え【からくり箱の好奇心|第19回】

 

夏を前に、すっかり衣替えはお済みのことだと思う。かつては、住まいも夏を迎えるためにしつらえを替えた。障子は「葦(よし)」をはめ込んだ夏障子へ、窓辺にはすだれを吊るして風通し良く。床には籐(とう)のマットを敷いて、さらりとした肌触りが心地良い……。しかし、エアコンで密閉された現代の住空間では、涼を取り込む手間をかけなくても快適だ。それでも、季節を感じながら暮らしたいという気持ちがどこかにある。そこで、提案したいのが「器の衣替え」だ。

 

まずは食器棚から、今ある器をすべて外に出してみよう。手持ちの器から夏に似合うものを選んでいく。そうめんには涼しげなガラスの器が似合う。冷奴には藍色の小鉢、薬味皿には白磁を合わせよう。お椀や箸置きまで夏向けに替えると、いつもの献立に季節感が生まれる。

 

なかでも、意外なほど活躍するのが「そば猪口」だ。冷酒を注げば粋な酒器になるし、ディップやリエットを入れる器としても重宝する。麺つゆを入れるだけではもったいないのだ。和風の染付もいいし、洋食器のフリーカップを合わせるのも楽しい。最近はフォークロア調やアーティスティックな絵柄のものもあり、小さな器ひとつで食卓の印象が変わる。

 

さらに、白木や黒竹のお箸、麻や竹素材のランチョンマットを添えれば、夏のコーディネートは上出来だ。自ら選んだ器で「補助線」を引きながら、食卓の上に夏という「座標」を囲んでいく。そこにはきっと、涼やかな風が吹き抜けるだろう。

 


■プロフィール

西濱 謙二(にしはま けんじ)

広島市生まれ・在住のライターです。人、街、企業、モノづくりなどの取材と撮影をフリーランスでしています。様々に活躍される方々からお話を聞くご縁に感謝し、同じシニア世代の方々にとって共感したり、和みになったり、小さくとも何かのお役に立てればと願っています。

 

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