ZUTTO応援団公開日:2025.12.18更新日:2025.12.18

転倒予防の新習慣!“つま先アップ靴下”で毎日をもっとアクティブに|株式会社コーポレーションパールスター

転倒予防の新習慣!“つま先アップ靴下”で毎日をもっとアクティブに|株式会社コーポレーションパールスター

寝たきりになる原因のひとつが、転倒による「大腿骨の頚部骨折」です。

健康寿命を延ばすために大切なのは、とにかく “転ばないこと”。
今回は、転倒予防に役立つ靴下を製造・販売している、東広島市の企業「コーポレーションパールスター」を訪ねました。

目次

転倒予防の靴下の仕組みとは?

私たちに身近な靴下。一体どのような仕組みで転倒を予防するのでしょうか。

「転倒予防くつ下」の仕掛人、開発に深く携わった大草さんにお話を伺いました。

 

統括製造販売責任者 大草 寛(おおくさ ひろし)さま

 

笑顔の大草さん

優しい笑顔の大草さん。よろしくお願いします!

 

■「転倒予防くつ下」にはどんな特徴がありますか?

大草 寛さん(以下、大草):一番のポイントは「つま先が自然に持ち上がる」仕組みです。靴下の生地の伸び方に工夫があって、足の甲とかかとの上はあまり伸びないようにして、逆に足の裏は柔らかくしています。こうすることで、履いたときにつま先がちょっと上がるんですね。

それから、つま先部分は二重構造。こうすることで、足の指を引っ張る力が働きますし、丈夫にもなります。

 

転倒予防くつ下の編み方の違いを説明

かかとと甲はしっかり編み(右上)、足裏はふんわり(左下)。つま先は二重構造(右下)で丈夫です。実は、ぎっしり部分とふんわり部分の糸の本数は同じだそう。

 

■つま先が上がるとつまずきにくくなるんですね。

大草:そうなんです。しかも、ゴムで締め付けるタイプじゃないので、自然なサポートになります。高齢の方は強い圧迫が逆に筋力低下を招くこともあるので、無理なく支えることが大事なんです。

開発のきっかけは母の転倒

■そもそも、どうしてこの靴下を作ろうと思ったのですか?

大草:実は私の母が62歳のとき、ほんの1cmぐらいの段差のカーペットに足を引っかけて転倒し、右肩を脱臼しちゃったんです。「つま先が1cm上がれば防げるんじゃないか」そう思ったのが、靴下づくりのきっかけでした。

 

靴下開発のキッカケを語る大草さん

「私のすぐ横を通っていたのに…、怪我を防げなかったことがショックでした。」

 

■なぜ靴下なのですか?

大草:毎日履くものだからです。サポーターだと「わざわざつける」必要がありますけど、靴下なら健康な方にも予防として自然と履いていただきやすいのではないかと思いました。

 

当時、私は義肢や装具の材料を扱う仕事をしていて、捻挫予防のサポーターを作りたいと色々考えていました。足首は持ち上げようとすると重いのですが、つま先を紐で引っ掛けたら結構簡単に上がるんですね。母親がつまづいたときにその記憶が蘇りました。「靴下でできるかも」とひらめいたんです。

 

作ってくれる靴下メーカーを探していたとき、偶然コーポレーションパールスターを知りました。義足用ソックスや糖尿病患者向けの靴下を作っていたので、アポなしで訪問したのが、商品開発の始まりでした。

履くだけで足元トレーニング

■つまづき防止以外にも効果はありますか?

大草:はい、履いて歩くとつま先の動きが大きくなるので、軽い筋トレみたいな効果があります。筋電位計で測っても、筋肉の動きが増えていることが確認できました。

さらに、つま先が上がることで足のアーチがしっかりして、歩く衝撃を吸収。膝への負担もやわらぐので、「膝が楽になった」という声もよくいただきます。

 

理学療法士さんによると、40歳を過ぎると体の動きと頭のイメージにギャップが出るそうです。この靴下を続けて履くと、つま先の動きが少しずつ大きくなり、ストレッチしているような効果も期待できます。

 

母が転んだのも62歳でしたから、できれば60代くらいから、普段の生活で気軽に履いていただきたいですね。

靴下ができてから、母もずっと履いてくれました。最終的には大腿骨骨折をして車いす生活になったりはしたんですけど、寝たきりにはならなかった。効果はあったんじゃないかと思います。

 

■快適さはどうですか?

大草:蒸れにくいです。「あぜ編み」という編み方で、汗を吸って乾いた方に移動させるので、雑菌が繁殖しにくく、臭くなりにくいんです。もともと当社が糖尿病患者さん向けに開発していた靴下の技術を活かしています。

それから、かかとがしっかり止まる構造なので脱げにくいのもポイント。農作業などで長靴を履く方にもおすすめです。

 

転倒予防くつ下について説明する大草さん

踏ん張る力が向上するのでスポーツにも良いですね。高校生のバスケットチームで導入したら、捻挫が減って決勝まで進出できたという話もありました。

医療・介護で広がる活用と工夫

■医療や介護の現場での反響はいかがですか?

大草:脳梗塞で麻痺がある方が「歩きやすくなった」と喜んでくださることもあります。靴下を履くと、階段の昇り降りが改善したケースもあります。

 

【検証実験の動画】

前半は靴下なしの様子、後半(1:04あたりから)は靴下着用の様子です。

片麻痺の症例(麻痺レベル4)では、この靴下を履くことで、階段昇降時に交互に足を運び降りられるようになるなど、改善が見られたそうです。

 

「転倒予防くつ下」と「どんどんウォーク」の写真

履き口が柔らかく、片手でも履きやすい「どんどんウォーク」(右)。もともとは「片手で履ける転倒予防くつ下」でしたが、幅広い方に使ってほしいと名前を変更。今では人気商品です。

 

大草:あと、病院内の転倒っていうのが結構あるんです。この度、病院向けにフリーサイズモデルも開発しました。かかと部分に特殊な糸を使って滑りにくくしています。広島市内の病院で販売を始めました。

 

転倒予防くつ下「フリーサイズモデル」の写真

フリーサイズモデル。かかとがどこにきても滑りにくい構造。ワンサイズ対応なので、病院の売店にも置きやすいそうです。

ご自身の健康を一番に

■どの製品も創意工夫がなされていて、お客さまのニーズに寄り添っているように感じました。

大草:先代の社長の「人の役に立てる商品を作りたい」という想いが強かったと感じています。また、当社はもともと帝健(帝人グループ)の下請けとして健康医療製品を50年ほど手がけてきました。だから、健康に対する意識が高いという社風があります。

 

効率よりも履き心地を優先し、機械の回転数を落として丁寧に編み、縫製にも特殊な技術を使っています。転倒防止くつ下の伸びる部分と伸びない部分を合わせるには熟練の技が必要ですし、つま先の二重構造も手作業で、糸の始末まで丁寧に仕上げています。

 

また、お客さまからのお手紙や振込用紙でコメントをいただきます。「靴下で階段が下りられるようになった、また自分に自信がもてるようになった」というお声もあり、私たちの励みになっています。

 

■今後はどんな展開を考えていますか?

大草: まずは「転倒予防くつ下」をもっと多くの方に知っていただきたいです。

また最近は、医療や介護の現場の声を取り入れ、寝たきりの方向けのスベリ座りや誤嚥・誤飲を防ぐクッションなども開発しています。

 

スベリ座り防止クッション実演の写真

椅子や車いすに座った時のスベリ座りを防止するクッション。実際に座ってみるとしっかり体が支えられている感覚です。移動の際の振動も軽減します。

 

姿勢を保ってくれるクッションの車いすでの実演の様子。

こちらは姿勢を保ってくれるクッション。食事の時に体を支えるので、誤嚥や誤飲を防ぐのだそう。

 

■最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

大草:やっぱりご自身の健康を一番に考えていただきたいです。

自分に合うものを取り入れて健康を維持していくことが、これからは必要ではないかと思っています。

その一つが「転ばないようにしましょう」ということですね。

また、「こんなものがあったらいいな」というご意見もぜひ皆さまからお聞きしたいです。

プロフィール

株式会社コーポレーションパールスター

広島県東広島市安芸津町三津4424
TEL/0846-45-0116
URL/https://www.corporation-pearlstar.com/
事業内容/高齢者・障害者の生活を支援する医療機器の製造・販売

編集部より

商品だけでなく、医療や介護の知識にも詳しい大草さん。でも、もともと医療に精通していたわけではなく、図書館で調べたり理学療法士に教わりながら学んだそうです。その努力と情熱にとても感銘を受けました。

関連の記事はこちら

おすすめのキーワード