ZUTTO応援団公開日:2024.09.24更新日:2024.09.24

大切なのは働きたいという気持ち。気がつけば老若男女が働くダイバーシティな職場になっていました。

大切なのは働きたいという気持ち。気がつけば老若男女が働くダイバーシティな職場になっていました。

燦燦と光輝く夏の日、しまなみ海道を渡って生口島へ。瀬戸田にある「島ごころ」本社を訪ねました。同社の「瀬戸田レモンケーキ 島ごころ」は、防腐剤やワックスを使っていない安心・安全な瀬戸田産レモンの果皮が使われ、香り高く、G7サミットのお茶菓子にもなった看板商品。「瀬戸田産レモンとお菓子の力で元気にしたい!」という想いで始まった同社では、地元のシニアが自分らしく働いておられました。

目次

逆境だから面白い!誰もが幸せに働きつづけられる職場づくり

専務取締役

奥本 寿華(おくもと よしか)さま

 

ZUTTO(ずっと)応援団 奥本さま

 

島ごころSETODA(瀬戸田本店)にて、同社のシニア雇用の内容と瀬戸田を取り巻く環境について、お話をお聞きしました。

 

■シニアの雇用状況についてお聞かせください

60歳以上の方はパートを含めて6人です。延長雇用の方もいますが、定年少し手前で新たに勤めてくださる地元の方が多いですね。当社の定年規定が60歳のため59歳以下で募集していますが、特にシニアを狙っているわけではありません。

ただ、60代なら十分に活躍いただけるし、採用の時は前職の経験や、ご本人のキャラクターも考慮しています。70代でこの業界が初めての方は難しいかもしれませんが、実際にお会いして熱意があれば検討します。

 

■シニアのお仕事ぶりはいかがですか?

箱詰めや包装を担当してくださっている女性は80代ですが(後ほど登場の溝神さん)、仕事に対する前向きな姿勢は社内一です。出社してすぐ「今日は何しましょうか!」と聞いてくれます。戦力として助かっているのはもちろん、私にとっての「心のオアシス」です。

最近は立ち続けるのが難しい日もあり、椅子に座って作業していただいています。「立って仕事ができなくなったから、仕事ができない」じゃなく、椅子を使ってもいいし、立つ必要のない仕事に替わってもらってもいい。シニアさんだけじゃなく妊婦さんにも、若くて体調が悪い人にもそうしてもらっています。

目の前にある仕事を達成することが大切なのであって、手段は工夫したり、変えたりしてもいいと思います。また、コロナ禍を経て、誰かが休んでも誰かがカバーできるよう、社内の業務体制も整えました。

 

ZUTTO(ずっと)応援団 奥本さま

どうすれば、若い人もシニアもみんなが働きやすくなるか。まず、新入社員にわかりにくい点を聞いて、それを改善しています。

 

■なぜそんな工夫ができるのでしょうか?

瀬戸田は都会と比べて人口に限界があるので、働ける人を増やす工夫は必須なんです。働く意欲があるのに働けないとその人は困ると思いますし、会社を続ける私たちも辞めてほしくない。そうしなければ生きていけない、というのが理由です。

私は以前から「瀬戸田は時代の10年先を走っている。日本の最先端を行っている」と考えています。1次~3次産業がバランスよくミックスされて、日本の縮図的な環境だと思うし、高齢化がいち早く進んでいる。これからの日本が生き残るためにどういう道を辿るべきなのか、強制的に試されていると感じています。

そうした中で瀬戸田が「進んでいる」と感じるのは、工夫している人の数が非常に多いということ。島外からの資本・需要・人も受け入れていますし、当社の従業員は8割が女性で、活躍してくれています。そういった点は他の地域にも参考になるんじゃないでしょうか。

 

■モチベーションはどこにありますか?

普通に成功しそうな環境で成功しても面白くないじゃないですか。でも、過疎の島で成功したら面白い。自分達もやりがいや達成感があるし、人から見ても面白いはずだと、ずっと思ってきました。

失敗したって、できなくて当たり前な環境だからそんなに痛手もない。でも、できたらメリットしかない。会社を始めた頃の瀬戸田レモンは「食卓にあるといいけど、無くても支障はない」と言われる存在でした。15年経って振り返ると、元々ここに在ったレモンをうまくPRすることで、地域が活性化して希望が生まれて、島外からも注目されて盛り上がって…ありがたいことだなと思います。

 

手先を使うことが大好き。何でも挑戦したい

溝神 ヨシ子(みぞかみ よしこ)さま

 

ZUTTO(ずっと)応援団 溝神さま

 

溝神さんは今年(2024年)84歳。内職時代から包装を担当する「包装のプロフェッショナル」。

奥本専務の「心のオアシス」です。

 

■勤め始めたきっかけを教えてください

社長が小さい頃からの知り合いで、そのご縁でね。工場に来るようになってからもう10年くらい。前は週に4回だったけど、今は1日おきに週に2~3回、9:30から12:30まで働いています。娘は心配するけど、家でゴロゴロするより働いた方が元気になれて楽しいから。元気なうちは働きたいです。

 

■大変だと思うことはありますか?

大変だとは思わないですね。これやって、と言われたら何でも挑戦します!前はレモンの皮を剥く作業もしていました。60歳くらいまでミシンの仕事をしていて、手先を使うのが好きだから。

もし、流れ作業の途中に入っていたら(ペースを合わせるために)しんどかったかもしれないけど…私は包装や仕上げを一人でやっていて、きついと感じたことはないです。

 

ZUTTO(ずっと)応援団 溝神さま

年の割にはね、(包装するのが)早いって言われています(笑)。

 

■実際にお会いして、お元気だなあと感じています

年齢を言ったら人にびっくりされます(笑)。車で通勤していますが、このまえ免許も更新してね。社長も「ボケたらいかんから、元気なうちはポツポツでもいいから来たらいい」と言ってくれて、嬉しいです。

電気工事業を定年後、「ジャムおじさん」へ転身

広田 健児(ひろた けんじ)さま

 

ZUTTO(ずっと)応援団 広田さま

 

広田さんの担当はジャムづくり。社員の皆さまから「ジャムおじさん」と呼ばれています。

 

■前職はどんなお仕事されていましたか?

電柱に登って電気工事をしていました。一つの会社にずっと勤めて60歳で定年退職、島ごころに勤めて9年目です。

 

■勤め始めたきっかけを教えてください

それまでとは違う仕事がしたくて応募しました。

 

■ご苦労はありますか?

暑いくらいかな。あと、最初は慣れなくて、周りの人に何度も聞きました。

 

■お仕事は楽しいですか?

仕事だから特別楽しいという感じではないけど、お店で商品が喜ばれているときは少しね。

でも、家でじっとしているよりはいいですね。年金に多少なりともプラスできたらいいし、動けるうちは働き続けたいです。

いま週3回、7時間の勤務だけど、少し身体がしんどくなってきたから、もう1時間少なくてもいいかな(笑)。

 

ZUTTO(ずっと)応援団 広田さま

この日はジャムづくりではなく、商品をカゴに並べておられました。人手が足りないときは担当外の業務も行い、工程をカバーしています。

 

■「ジャムおじさん」と呼ばれることはどうですか?

抵抗は無いです。若い人とも一緒に仕事しますが、教えることより、教えられることの方が多いかな。でも、若い人と働くことは苦にならないです。

プロフィール

株式会社島ごころ

本社/広島県尾道市瀬戸田町沢209-32
TEL/0845-27-0353
URL/https://www.patisserie-okumoto.com
事業内容/菓子製造

編集部より

取材と合わせて、工場見学もさせていただきました。工場内はレモンケーキの美味しい香りで満ちていました。専務の奥本さまにお伝えすると「そうですか?ずっとこの中にいるとわからないんですよ」と笑っておられました。
本文でも触れたように、工場内にも工夫がいっぱい。作業の留意点などが、わかりやすく、かつ、ユーモアのある文章で掲示されていました。体温のある「人づくり」「地域づくり」の欠片をそこにも感じました。レモンケーキの香りとともに、印象に残っています。

関連の記事はこちら

おすすめのキーワード