大切なのは働きたいという気持ち。気がつけば老若男女が働くダイバーシティな職場になっていました。
逆境だから面白い!誰もが幸せに働きつづけられる職場づくり
専務取締役
奥本 寿華(おくもと よしか)さま
島ごころSETODA(瀬戸田本店)にて、同社のシニア雇用の内容と瀬戸田を取り巻く環境について、お話をお聞きしました。
■シニアの雇用状況についてお聞かせください
60歳以上の方はパートを含めて6人です。延長雇用の方もいますが、定年少し手前で新たに勤めてくださる地元の方が多いですね。当社の定年規定が60歳のため59歳以下で募集していますが、特にシニアを狙っているわけではありません。
ただ、60代なら十分に活躍いただけるし、採用の時は前職の経験や、ご本人のキャラクターも考慮しています。70代でこの業界が初めての方は難しいかもしれませんが、実際にお会いして熱意があれば検討します。
■シニアのお仕事ぶりはいかがですか?
箱詰めや包装を担当してくださっている女性は80代ですが(後ほど登場の溝神さん)、仕事に対する前向きな姿勢は社内一です。出社してすぐ「今日は何しましょうか!」と聞いてくれます。戦力として助かっているのはもちろん、私にとっての「心のオアシス」です。
最近は立ち続けるのが難しい日もあり、椅子に座って作業していただいています。「立って仕事ができなくなったから、仕事ができない」じゃなく、椅子を使ってもいいし、立つ必要のない仕事に替わってもらってもいい。シニアさんだけじゃなく妊婦さんにも、若くて体調が悪い人にもそうしてもらっています。
目の前にある仕事を達成することが大切なのであって、手段は工夫したり、変えたりしてもいいと思います。また、コロナ禍を経て、誰かが休んでも誰かがカバーできるよう、社内の業務体制も整えました。
■なぜそんな工夫ができるのでしょうか?
瀬戸田は都会と比べて人口に限界があるので、働ける人を増やす工夫は必須なんです。働く意欲があるのに働けないとその人は困ると思いますし、会社を続ける私たちも辞めてほしくない。そうしなければ生きていけない、というのが理由です。
私は以前から「瀬戸田は時代の10年先を走っている。日本の最先端を行っている」と考えています。1次~3次産業がバランスよくミックスされて、日本の縮図的な環境だと思うし、高齢化がいち早く進んでいる。これからの日本が生き残るためにどういう道を辿るべきなのか、強制的に試されていると感じています。
そうした中で瀬戸田が「進んでいる」と感じるのは、工夫している人の数が非常に多いということ。島外からの資本・需要・人も受け入れていますし、当社の従業員は8割が女性で、活躍してくれています。そういった点は他の地域にも参考になるんじゃないでしょうか。
■モチベーションはどこにありますか?
普通に成功しそうな環境で成功しても面白くないじゃないですか。でも、過疎の島で成功したら面白い。自分達もやりがいや達成感があるし、人から見ても面白いはずだと、ずっと思ってきました。
失敗したって、できなくて当たり前な環境だからそんなに痛手もない。でも、できたらメリットしかない。会社を始めた頃の瀬戸田レモンは「食卓にあるといいけど、無くても支障はない」と言われる存在でした。15年経って振り返ると、元々ここに在ったレモンをうまくPRすることで、地域が活性化して希望が生まれて、島外からも注目されて盛り上がって…ありがたいことだなと思います。
手先を使うことが大好き。何でも挑戦したい
溝神 ヨシ子(みぞかみ よしこ)さま
溝神さんは今年(2024年)84歳。内職時代から包装を担当する「包装のプロフェッショナル」。
奥本専務の「心のオアシス」です。
■勤め始めたきっかけを教えてください
社長が小さい頃からの知り合いで、そのご縁でね。工場に来るようになってからもう10年くらい。前は週に4回だったけど、今は1日おきに週に2~3回、9:30から12:30まで働いています。娘は心配するけど、家でゴロゴロするより働いた方が元気になれて楽しいから。元気なうちは働きたいです。
■大変だと思うことはありますか?
大変だとは思わないですね。これやって、と言われたら何でも挑戦します!前はレモンの皮を剥く作業もしていました。60歳くらいまでミシンの仕事をしていて、手先を使うのが好きだから。
もし、流れ作業の途中に入っていたら(ペースを合わせるために)しんどかったかもしれないけど…私は包装や仕上げを一人でやっていて、きついと感じたことはないです。
■実際にお会いして、お元気だなあと感じています
年齢を言ったら人にびっくりされます(笑)。車で通勤していますが、このまえ免許も更新してね。社長も「ボケたらいかんから、元気なうちはポツポツでもいいから来たらいい」と言ってくれて、嬉しいです。
電気工事業を定年後、「ジャムおじさん」へ転身
広田 健児(ひろた けんじ)さま
広田さんの担当はジャムづくり。社員の皆さまから「ジャムおじさん」と呼ばれています。
■前職はどんなお仕事されていましたか?
電柱に登って電気工事をしていました。一つの会社にずっと勤めて60歳で定年退職、島ごころに勤めて9年目です。
■勤め始めたきっかけを教えてください
それまでとは違う仕事がしたくて応募しました。
■ご苦労はありますか?
暑いくらいかな。あと、最初は慣れなくて、周りの人に何度も聞きました。
■お仕事は楽しいですか?
仕事だから特別楽しいという感じではないけど、お店で商品が喜ばれているときは少しね。
でも、家でじっとしているよりはいいですね。年金に多少なりともプラスできたらいいし、動けるうちは働き続けたいです。
いま週3回、7時間の勤務だけど、少し身体がしんどくなってきたから、もう1時間少なくてもいいかな(笑)。
■「ジャムおじさん」と呼ばれることはどうですか?
抵抗は無いです。若い人とも一緒に仕事しますが、教えることより、教えられることの方が多いかな。でも、若い人と働くことは苦にならないです。
プロフィール
株式会社島ごころ
TEL/0845-27-0353
URL/https://www.patisserie-okumoto.com
事業内容/菓子製造
編集部より
本文でも触れたように、工場内にも工夫がいっぱい。作業の留意点などが、わかりやすく、かつ、ユーモアのある文章で掲示されていました。体温のある「人づくり」「地域づくり」の欠片をそこにも感じました。レモンケーキの香りとともに、印象に残っています。