ZUTTOな人々公開日:2026.10.28更新日:2026.10.28

気負わず、飾らず、「なるようにしかならん」の精神で<せとうちの郷 スタッフ>阿部 肇さん

気負わず、飾らず、「なるようにしかならん」の精神で<せとうちの郷 スタッフ>阿部 肇さん

にこやかな笑顔と、温かみのある関西なまりの語り口。
「チャーミングな81歳のスタッフがいる」という情報をいただき、今回は特別養護老人ホーム「せとうちの郷」で働く阿部さんを訪ねました。

職員の皆さまから愛されている、施設の頼もしき「お助け役」。
自らの引き際を潔く決め、求められる場所で気負わずに働き続ける阿部さんに、日々の暮らしと仕事への思いをお聞きしました。

目次

自ら決めた引き際と、今の役割

― せとうちの郷で現役でお勤めですが、普段はどんなお仕事をされていますか。

阿部 肇さん(以下、阿部):施設にある畑の仕事と、あとはちょっとした修理やね。トイレットペーパーのホルダーが壊れたら呼ばれて直したり、鍵が壊れたら直したりしてます。

週に5日、朝の8時半から午後2時まで働いとるよ。

 

笑顔の阿部さん

笑顔が素敵な阿部さん。

 

― ずっと修理のお仕事を?

阿部:いやいや、ほんの1、2カ月前までは利用者さんの送迎をしとったんよ。でも、もう年やから「そろそろ引退するわ」って自分から言いました。今は施設から施設へ職員さんを送迎するくらいで、利用者さんの送迎は引退。事故でも起こしたら危ないからな。

 

― こちらにはいつ頃からお勤めなんですか。

阿部:15年前からやな。勤めるキッカケは、ここにヘルパー試験の講習を受けに来たんです。「資格でも取っといたら何かの役に立つやろか」と思って。

無事に資格は取れたんやけど、いざ施設長と面接したときに、「やっぱり自分に介護の仕事は務まらんな」と。それで送迎のほうに移してもらったんよ。

 

― そうだったんですね。今では壊れたところがあれば頼りにされる存在ですね。

阿部:どうやろ。まあ、おったらおったで、それなりに良いところがあるんやろね。

ここの人らがやかましく言わずにいてくれるから、今までおれたんよ。怒られんもんやから、自分がちょっと甘えてるんやな(笑)。

 

帽子につけた虫よけトンボの写真

虫よけトンボが帽子のアクセントに。「これ、効いてるんか、効いてへんのかわからんけどな。」

冗談が通じる仲間と、心地よい距離感

― 職員の皆さんとご一緒にお昼を食べられることもありますか。

阿部:うん、一緒に食べるよ。職員は全部で50人くらいおるかな、女性が多いね。

介護施設やから普通の会社と違って、みんな一斉にお昼休憩とはいかんのよ。利用者さんのお世話をしながら代わりばんこやからね。

みんな本当によく頑張っとるよ、俺から見たら感心する。

 

― 現場へのリスペクトがあるんですね。職員の皆さまとは普段どんな会話を?

阿部:話の合う人がおるよ。こっちが冗談言うたら、パッと冗談を返してくれるような人。やっぱり冗談が通じると気持ちが良くなるね。

 

― 以前、職場体験に来た高校生とも交流があったそうですね。

阿部:たまたまうちの近所に住んどる子が来とったんよ。特別知り合いってわけやなかったけど、「近所の子やな」と思ったら、話しやすかったね。

今は「なるようにしかならん」の境地で

― 81歳で毎日身体を動かして働くことは、やはり健康に良い影響がありますか。

阿部:そうやね、健康でおれる秘訣やと思うよ。家でぼーっとテレビ見とるのとは、やっぱり違うからね(笑)。

 

― お仕事以外の趣味は何かお持ちですか。

阿部:趣味はな、無趣味なんや。パチンコはたまに行くけど、あれを趣味と言えるんかな。

仕事のあとは、家でも畑で野菜を作っとるよ。始めて10年くらいになるかな。今の秋の季節やと、大根やほうれん草、キャベツ、白菜とかやね。けどな、結局買うたほうが安い(笑)。

 

― 修理も野菜作りも、手を使って何かを直したり作ったりするのがお好きなんですね。

阿部:どうやろうなあ。今までやってきた仕事の感覚が、続いとるだけかもしれん。例えば、大工さんが現場で自然と木を組むのと一緒。体が覚えとるから、手が勝手に動くようなもんやね。

 

― これからも、お仕事を続けていかれますか。

阿部:やっぱりもう81歳やから、なるようにしかならん。若かったらね、「頑張って何かを切り拓くぞ」ってこともあるやろうけど、この歳になったら、なるようにしかならん。ほんまそう思うね。

「明日やめる」こともあり得る歳やから。だからこそ、80を超えて「来てくれ」と言われるだけで、ありがたい話やね。

 

 


インタビューの後、仕事場の畑も見せていただきました。

秋ナス、ピーマン、大根、キャベツなどが育っていました。

 

せとうちの郷 キャベツ畑の写真

「これはキャベツやな。」

 

阿部さんが畑に出ていると、施設のご利用者が建物から手を振っておられました。こんなところにもコミュニケーション!

 

せとうちの郷 ナス畑の写真

秋ナスを収穫。

 

収穫したナスを抱える阿部さん

「今日の収穫はこんなもんかな。」

 

阿部さんからいただいた野菜

阿部さんからお土産に畑で採れた野菜をいただきました。ありがとうございました!

 

 


★お知らせ

特別養護老人ホーム せとうちの郷では、主に60歳以上の方を対象にした健康づくりと交流の集い「にこにこ会」を開催しています(毎月第2月曜日)。

開催日やお申込み方法など、詳しくは社会福祉法人 藤花会のホームページをご覧ください。

https://www.tohkakai.jp/

 

認知症カフェ「にこにこ会」の写真

「にこにこ会」も見学させていただきました。

 

せとうちの郷 看板の写真

おかやまコープ西大寺すぐ近く、赤い看板が目印です。

 

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プロフィール

阿部 肇(あべ はじめ)

岡山市在住。15年前から、社会福祉法人藤花会の送迎担当として勤務したのち、現在は施設内の畑仕事と施設内設備の修繕を担当。

社会福祉法人 藤花会 特別養護老人ホーム せとうちの郷
岡山県岡山市東区西大寺北966
TEL/086-942-1220
URL/https://www.tohkakai.jp/

編集部より

カメラを向けると「緊張するわぁ」とおどけて笑う阿部さんは、とてもチャーミングな方でした。
インタビューの最後に語られた「なるようにしかならん」という言葉。80歳を過ぎた人生の実感がこもったそのまっすぐなひと言が、取材を終えた今も深く心に残っています。

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